黒字倒産。この言葉を聞いたことがある人も多いのではないだろうか。
いや、社会人だったらこれくらいの言葉は覚えておいてくださいよ。まあ、こういうね、経営まわりのことって親が何か会社をやっていたりすると、
「こういうことよね?」と理解したつもりになっている人もいるだろうけど、実際に経営してみないと中々この「黒字倒産」という概念については深く理解できないような気もします。
だからね、今回はそんな黒字倒産についての説明と、私なりに思うことをね、書いていこうと思います。
お金が回れば会社は倒産しないという不思議
あのね、よくこれを勘違いしていると思うのだけど、会社ってのは赤字になったから倒産するわけじゃないんですよ。
例えば、1億円の売上に対して、2億円の経費がかかっている。するとマイナス1億円になりますよね。でも、だからといって倒産するわけじゃない。会社が借入をすれば問題ないわけです。
1億円を銀行から借りてくれば会社を回すことはできる。でも、よく年には3億円稼いで2億円の経費がかかる状態に持っていけば、この年で借金はゼロになるわけですよ。
会社ってのはね、赤字だから倒産するわけじゃないのですよ。会社ってのはお金が回らなくなった時に倒産してしまうのです。
経営者の中には、まだまだPS、BLさえも読めない人がたくさんいます。税理士が毎月作ってくれていても、「はいはい」と言った感じで読まないのは初代の創業者あるあるかもしれません。
そういう人は「まあ稼げば良いっしょ」と思っている。でも、実際には稼いだだけでは黒字倒産してしまう可能性がある。
通帳を見てみると、「あれ?稼いでいるはずなのに全然預金残高が増えないな……」なんて思ったりする。笑
そういう経営者って実は本当に多いからね。全国の税理士のみなさん、そうですよねえ?
きっとですね、PLとBSを作ったのに見向きもしてくれなくてテンションが下がっている税理士さん、そこで働いている職員の方、たくさんいるんじゃないですか?笑
お金が回れば倒産をしない。一般の人も知らないことだと思う。だからこそ、逆にね?黒字だったとしても、お金が回らなければ倒産してしまうのよ。
1億円稼いでいても、10億円稼いでいても、お金の流れが止まってしまったら、もうその時点で会社は終わりです。
1億円の赤字、10億円の赤字があっても、お金の流れが止まっていなければ、大丈夫ということです。
JALなんてさ、2021年3月期は3000億円の赤字を見込んでいるじゃないですか。でも、まだ倒産していませんよね。それは保有していた有価証券を売却したり、3000億円程度の追加融資がされていて、手元のキャッシュを増やしているからこそ倒産しないのです。
お金の流れが止まってしまっているのか、動いているのか、そこなんですよね。
黒字倒産をする時のパターン
黒字倒産をする場合ってのもあるんですよ。例えば、会社にある現金が800万円だったとしよう。
そうだな。企業で使う大型プリンターの会社をやっているとしよう。まず、メーカーから仕入れます。この時の仕入れ金額は全部で1000万円。で、支払いは翌月末。
このプリンターを取引先の法人に対して売ります。法人へは2000万円で売却します。この時、相手の会社からの支払いは翌々月末。
利益的には出ますよね。仕入れが1000万円でそれを2000万円で取引先に売るのだから、1000万円の利益になる。
でも、この時、自分の会社がお金を支払うタイミングと自分の会社がお金をもらうタイミングが違うということに気が付くと思います。
つまり、自分がもらうお金よりも、自分が出すお金の方が早い。翌々月には2000万円が入ってくるのだけど、翌月末には1000万円を支払う必要がある。
しかし、会社にある現金は800万円しかない。つまり、200万円分足りないということです。ここで銀行が200万円を貸してくれれば大丈夫。
翌々月にはお金が入ってきますから。でも、もしも貸してくれなかった時には黒字倒産になってしまうということです。
黒字倒産をした企業としてみなさんの記憶にあるのは「江守グループホールディングス」ではないでしょうか。中国からの売掛金を回収できなかったことによる黒字倒産です。
東証一部上場だったのにね。難しいものです。
サラリーマンの人なんかだと、「ただ稼げば良い」と思っているかもしれませんが、経営となると色々と難しい。ただただ稼いでいるだけでは倒産してしまう可能性があるのです。
キャッシュフローがしっかり回っていないと、黒字であっても倒産する可能性ってのはあるのですよ。
サラリーマンをやっていた人が、まず最初に行き詰まるのはここじゃないですかね。黒字だから良いというわけでもないというのが経営の難しい部分。
しかもね、「ああ、資産があるから大丈夫だ」と思っていたら、流動性の低い土地だったり、自社の工場だったりして資産としての価値はあるけれどすぐにキャッシュにならないお金だったみたいなこともあるから、本当に難しいものです。
会社が大きくなればなるほど、より難しくなってくるんじゃないですかねえ。
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危ない経営をしている経営者はたくさんいるよ
これはね、意外と知られていないことだと思いますが、結構危なっかしい経営をしている会社ってのはあるんですよ……。
仮受消費税なんかも理解していないと、勝手に使ってしまって、「あれ?消費税を支払うことができないっ」みたいなことになったりね。笑
ほら、消費税って企業がみなさんの代わりに納めていますから。100万円のものを買ったら、100万円と10万円の仮受消費税になって、それを後で支払う。
でも、現金としては口座に消費税分が残っているので、「これを使ってなんかやっちゃお」みたいなこともできるわけですよ。まあそれでね、黒字倒産しちゃったりなんてことは容易に考えられることです。
まあちょっと特殊でおバカな例かもしれませんが。笑
「経営者」という肩書きがあるだけで、何となくすごい感じがするじゃないですか。でも、実際には違うんですよね。
10年くらい経営者をやっていても、会計のことなんて何も知らない人だっています。稼げば良いと思っている人の方が実際には多いんじゃないかな?とすら思う。
特に創業者タイプの経営者に多いね、この傾向。イケイケな感じの創業者。
黒字倒産する企業ってのもまあ実際にありますから、危ない経営をせずにね、堅実に積み上げていくべきだと思います。
はい。まあ私は小さくやっているだけなのであれなんですけど、大きな企業の経営者の方々は大変だろうなあ。
ではでは、まりもでした。
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