社員の意見を何でも聞いてくれる社長。そんな人が社員は大好きなのかもしれない。それはたしかに理解することができる。
自分の意見を社長に言ってみて、「そうしよう」となったら、それはそれで嬉しいことじゃないですか。
でもね、社長はね、社員の意見を聞くだけが仕事ではないと思うのよね。
社員の意見を聞かないで自分が「こうだ!」と思った方向に社員たちを導いていくのもまた社長の仕事だと思う。
社員の意見を聞かないのもまた正義だと思ってしまう。
社員の意見を聞く社長って良いよね、と思うのは凄くわかる。社員側だったらそう思うのもわかる。
ただ、それが全てじゃないのよ。
社員の意見を聞かなくて良い理由
社員は会社全体の利益を考えない
社員というものは「会社全体の利益」を考えてはくれません。
例えば、オフィスを選ぶ時、社長が社員全員に移転先について意見を聞いたとしよう。
- 巣鴨
- 銀座
- 亀有
のどれが良いと思うか?と聞く。すると、おそらく多くの社員は「銀座」と答えるだろうね。
なぜか?単純な話、「お洒落だから」だよね。銀座のオフィスに出社することができるなんて格好良いから。
それだけなのよね。社員の意見を聞かない社長を「ダメ社長」と世間は言うのだけど、それは数字的根拠があって言っているのだろうか?と思う。
社長は誰よりも「会社の存続」を考えて行動しています。社長だって、「銀座で働きたい」という気持ちはある。
当たり前じゃないですか。でも、それでは会社の固定費が増えるから警戒するわけです。
「不景気になった時にこの固定費は厳しいな」と。
社員的には「銀座が一番イメージ良いし、最高ですよ!一択です!」という感じで言ってくると思う。でも、それは「会社が存続する前提」です。
社員側は「会社が倒産する可能性」を全く考えない。何ならオフィスの場所によって変動する交通費に関しても考えない。
そういうものなんですよ。
責任を取るのは社長である
現場の社員の意見をある程度聞いてみるのは大事です。
例えば、あなたが街の洋食屋の経営者だったとしよう。現場スタッフとして働いているホールスタッフから、
「社長!お客様によく“コーンポタージュはないんですか?ランチと別に頼みたい!”と言われるんですよね」と聞いたとする。
こんな時には社員の意見を聞いた方が良い。客単価が上がり、会社の利益も上がる。
でも、例えば、
「社長!20時以降は人がほとんど来ないのでお店を閉めるのはどうでしょう?社員も健康になるし、士気も上がりそうです!」と言ってきたとする。
これはどうだろう?こうなってくると、たしかに社員の満足度は上がる。ただ、労働時間が短くなったことで、残業代の計算が変わってくる。結果的に利益を圧迫することもある。
社員は幸せになるでしょう。社員は周りに「うちの会社は社員の言うことを聞いてくれて最高なんだよ!」と言う。
でも、業績が下がった時はどうだろう?
満足してくれた社員は、会社の業績が下がったら自分の給料も下げてくれるのだろうか?
「社長!私、会社のために給料なしで良いです!」なんて言う?家族がいてもそんなことが言えますか?
結局ね、責任を取るのは「社長」だったり、「オーナー」なんですよ。
社員の意見には正しい部分もある。けれど、それは社員としての意見であって、会社全体を考えた意見ではなかったりする。
そして、社員は責任を取ってはくれない。何度も言うけど、最後に責任を取るのは「社長」なのです。
社員の意見は十人十色
「社員の意見」と言っても、意見の中身は実に多様です。
例えば、あなたがAppleの社員だったとしよう。これからのiPhoneはどうしていけば良いだろう?
中には「YouTuberが増えるだろうから、より高性能なカメラをつけた方が良いですよ!」と言ってくる人がいる。
それだってもちろん正しい意見の可能性がある。
でも、また別の社員は「いやいや、これからの時代は海で遊ぶ人が多くなってくるし、自分もめっちゃ海に行くんで完全防水にするべきっすよ」と言ってくる人もいる。
社員の意見を全て聞き入れるということなんてできないわけですよ。「参考程度」にするのは良いと思うのだけど、全てを聞けるわけじゃないし、正しいわけでもない。
だからね、実は社長は社員の意見を聞かないという選択肢を持ってみても良いんじゃないの?と思う。
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何でも社員に聞く社長の心理
自分に自信がない
結局ね、社員に何でも聞いてしまって、それを実行する社長さんってのは自信がない人なんですよ。
自分に自信がある人であれば、社員の意見を聞いても、全てを飲み込むということはしないはずです。
社員に何でも聞いて、社員が言った通りのことを実行する。そうすれば、会社はどうなってしまうのでしょうか?
そもそも、自分で何でも考えて行動することのできる人が社員だったらさ、その社員は既に独立していると思いませんか?
だからね、基本的には「社長」と「社員」とで、全く違うものだと思った方が良いのです。社長が社員に何でも意見を聞いてしまうのは自信がないから。
サラリーマン社長とかで、突然社長になってしまった人とかはやっぱり聞いてしまうこともあるよね。
「これ、どう思うかな?」と。で、結構取り入れてしまったりするんですよね。もちろん正しい部分もあるし、正しい場面もある。
ただ、全てを取り入れてしまうのは違うのよ。社員の意見を聞かないのもまた正義だったりするのです。
社員とのコミュニケーション
社員とのコミュニケーションをはかるために、あえて社員に聞いて実行するという社長さんはいますよね。
これに関しては割と効果的なのかな、とも思います。まあこういう社長さんの本音は「社員の声を聞いて、コミュニケーションをとることにより、社内の雰囲気を良くしていきたい」という感じかな。
社員とのコミュニケーションって大きな会社であればあるほど、なくなっていってしまうものです。
30人以上くらいになってきたら、もう社長と話す時間とかも少なくなってくるんじゃないかな、と思います。
だからこそ、社長側から社員に寄っていって、「ここはどう思うかな?」と聞くのですよ。
社員の意見を、意思決定の材料にするというのはあまり良くないかな、と思いますよ。
でも、コミュニケーション手段として聞いてみるというのはありかな、と思います。
社員とのコミュニケーションをとりたい、という理由で社員の意見を聞く社長ってのも多いと思うなあ。
自分の意見を持って、突き進む強引さも必要よ
周りの意見を聞く社長。こうやって書いてみると、なぜだか良い社長さんのように思えてきますよね。
でもさ、良い意見とか、奇抜な意見というものは「大衆の意見」ではないわけですよ。集合体から生まれた、大多数の人が賛成する意見というものはビジネスの世界では好ましくない。
むしろ、「これ大丈夫なの?」とか「成功しないよ」と言われるビジネス案にこそ価値があるんじゃないかな、と思うよ。
経営者であっても不安になる時はあるよね。成功している時は良い。「俺は天才だ」と思える。
でも、業績が悪い時、起業仕立ての時にはどうだろうか。不安になり、自分の意見が本当に正しいのかわからなくなってくるんですよね。
社員の意見を聞いて、社員の言っている通りに実行したくなるんですよね。
けど、それじゃあ会社は成り立たないことだってあるんだよ。社長はね、社員の意見を聞かなくても良いんじゃないの?と最近は思うよ。
社員だってさ、本当に自分の意見が正しいと思うなら、自分の会社を作って、借金をして事業を始めれば良いわけだしね。
それで良いのですよ。社長なのだから、ある程度のリーダーシップと強引さは必要よ。