かつての私は何も持っていなかった。いや、むしろマイナスだったかもしれない。親が死んでしまったり、親の借金を返す事になったり、
会社をやる事になったり。
そんな日々には何もなかった。私にも何も残っていなかった。大切な人が目の前からいなくなってしまうと悲しいよね。
外は夏本番で、私をあざ笑うように太陽が輝いている。でも、そんな太陽や世の中とは正反対に私はただただつまらない絶望の毎日を送っていた。
いや、本当は希望は失っていなかった。でも、それでもつらかったんですよね。
そんな私だった。それから何年もの月日が経ち、大切なものとか、大切な人ができた。とても嬉しかった。大切な人がいて、
大切なものがある。それが何よりも嬉しかった。
でも、大切な人とか、ものが増える度に怖くなる時があるんだ。
当たり前の存在になってしまう
大切なものに出会った時に、私たちは喜びを感じる。でも、どうだろうか、喜んでいるけれど、どこかで「まだ自分の身体とは遠い存在」になっているのではないだろうか。
自分のもの、というわけではないけれど、どこかで他人のもののような気がする。別になくなったところで愛着だってないし、
思い出もない。だから、ある日突然大切なものとか、人がいなくなったとしても、何も感じないでしょう。心が痛くならない。
でも、何年も経って来ると、当たり前のものになってしまう。なくてはならないものになってしまうです。私はつらかったあの頃、
何も持っていなかった。だから、つらかったのだけれど、「何かを失ってしまう恐怖」みたいなものはまるでなかった。
失うとしたら、自分の命くらいだけれど、自分の死ぬ事もそこまで怖くなかったような気がした。ある意味ではその当時は強かったのです。
失うものがないから何かを守るような気持ちにもならない。そう考えると、生きやすかったのかな。
それに比べると、今は当たり前に大切なものが増えてきてしまった。それは嬉しい事でもあるのだけれど、何だか私は「失う怖さ」を持ってしまう時がある。
「消えてしまったらどうしよう」なんて思う。大切なものへの愛とか、思慕の念とか、そんなものなのかな。
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万物は終わりに向かって進んでいく
大切なものとか、大切な人とか、皆さんにもいると思う。でも、万物は終わりに向かって進んでいくのです。世界には大きな時計があるような気がしている。
誰も世界時計を止める事はできない。知らない間に廊下が進んでいき、「あれ?こんなにシワがあったっけ?」と感じるようになる。
世界は少しずつ変わっていて、世界は少しずつ過去となった生命を吸い取り、世界がリクリエーションされていく。
つまり、大切なものとか、人がいても、やがて消えてしまう、という事でもあるのです。大切なものが増える事は嬉しい事。
これは正しいと思う。でもさ、大切なものとか大切な人が増える度に、いつか来る「悲しさ」を想像してしまう。
物や人の命は有限だからこそ美しいのだと思うよ。1度しかない人生の中で夏の夜空の下で咲く線香花火のように、
短い間、光るから美しいのだと思う。
とはいえ、大切なものを持っている人からすると、何だか悲しくなってきてしまう。思い出が積み重なっていくほどに悲しみが積み重なっていくような気がしてしまう。
遊園地の中で、1人だけ迷子になってしまった子供のように、心の中では少しだけ寂しい顔をしているような気がするよ。
大切なものとか、人とか、何もかもを持っていなかったあの頃は何も怖くなかった。でも、今は大切なものが、たくさんあるんだ。
だから、悲しいんだ。
優しく生きたいな
大切なものとか、人とか、そんなものが増える度に不安な気持ちになる時がある。万物はやはり終わりに向かっているから、
いずれは「別れ」を経験することになる。そう考えると、寂しいね。
寂しくなるなあ、時々1人で考えることがある。でも、だからこそ優しく生きたいな、と思ったりもする。大切なものとか人はいつも一緒にいてくれるものではない。
気がついたらいなくなってしまって、気がついたら、遥か彼方、遠くの空にいるかもしれない。そういう経験を実際に私がしたからね。
だから、その瞬間まで優しく生きていきたいなと思う。大切なものとか人とか、ずっと一緒にいられる存在ではないから、
その時に精一杯の愛情を注ぎたいな、とも思うのです。
皆さんにもあるでしょう?好きなものとかさ、人とかさ。
そういうものを大切にしたら良いと思う。近くにいればいるほど、大切なものや人の存在は意識の外に追いやられてしまう。
朝起きたら、「おはよう」と言う人がいる。それが当たり前だと思っている。でも、違うよ。いつの日か、「おはよう」と声をかけても、
誰からの返事もかえってこなくなる時がある。悲しいし、寂しいけどあるんだよ。
その日まで、優しくね。優しさを持って生きていこうね。
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