私たちは生きているだけで、体力を消耗してしまう生物。人との関係性であったりとか、お金に関してとか、人によって違うのだけれど、
何かに疲れている。概ね人生は楽しいはずなのに、人生に疲れる事はある。不思議だよね。
だから、時々何もかもを忘れて隠れてしまいたくなる時もある。誰にも知られていない秘密の場所でゆったりと過ごしたい、と思うような時だってある。
誰から隠れたい、世の中から離れていたい、こんな気持ちは小さい頃からあった。そして、そんな私を隠してくれたのが雨だったような気がする。
皆さんはどうだろう。雨は好きですか?
雨の日は音のない世界へ
雨というものは基本的に嫌われている。「雨が降っているから外出は控えよう」なんて人も多いと思うからね。でも、私は雨が好き。
雨が降ってくると、傘をさす。傘にポツンポツン、と雨が当たる。大雨の時なんかだともっとすごい。
ポツンポツンポツン。ポツポツポツ。
雨が降れば、傘はどこぞの民族楽器のように音を奏でるようになるのです。傘をさして歩いていると、そんな音に全てが消される。
前から歩いてくるカップルの会話、私の咳払い、独り言。雨が降ると、私という人間を雨が包み込み、隠してくれるような気がするのですよ。
人の声が聞こえると、なぜだからそこに相互性が生まれてしまう。
「人がそこにいる、私がここにいる」という事実だけで2人の間には何らかの関係ができてしまう。これを断ち切るのが雨だったの。
傘をさし、雨の中に少しだけ隠れさせてもらう。そうすると、私は不思議と安心する事ができる。雨の日に外には出ない、これが普通の事。
普通の事かもしれないのだけれど、私は何かから隠れたい時、何かから逃げたい時、雨の中を歩きたい、という衝動にかられるのです。
複雑に鳴り響く雨の音が、母親のお腹にいる時のような安心感を僕らに与えてくれるような気がする。
何者でもない誰かになりたい
私たちは生きている限り、名前を持ち、生きていく。佐藤さんとして生まれたら佐藤さんとして生きていく。生きている時間が長くなるに連れて知り合いも増えていくし、
「私」という人間の知名度も上がってきてしまう。しかし、そうなってくると、急に息苦しくなってくる。
「私」という1人の人間として生きていく必要があるから。でも、雨はそんな私をそっと隠してくれるのです。外にいる時でも、傘をさしていれば顔を見られる事はない。
だから雨が好き。
雨だと、なぜだか下を向いて歩く人が増えるから、こちらを見る事がないのです。雨が降っているから、顔だって少しぼやけてしまう。
別に何か特別な事をしようとしているのではない。隠れたからといって、何かをするわけではないのだけれど、私として生きる必要がないから楽なのです。
現状に不満があるわけではない、何か隠れなければいけないような犯罪歴があるわけではない。そんな事ではないのだけれど、なぜか雨が好きなのです。
私たちはどこかを歩いていると、誰かに会ってしまう。中学校の友達、高校の友達。幼馴染。そんな中で生きているのです。
それは良い事でもある。楽しい事でもある。会えば「久しぶり」と手を振る。でもね、誰でもない誰かになる瞬間だって大事だと思う。
何があるわけでもないのだけれど、雨に隠れて、自分の思うようにただ歩く。そんな時間だって人生の大切な瞬間なのです。
雨が好き、なんて言うと、不思議に思う人もいるだろうけど、雨の中歩いてみれば良い。
そうすればきっとわかる。雨が好きになると思う。
「NO NAME」の誰かになる事ができる雨の存在を愛おしく思うでしょう。雨が作り出す世界に、私たちは救われているような気がする。
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何でもない雨の日に公園を歩いてみた
ちょうどこの前歩いてみたんですよね。雨の中、公園の中を歩いてみた。雨は思っていた以上に強くて、何だか不思議でした。
大人になってから、やった事がなかったのだけれど、公園に行ってカブトムシを探してみたんですよね。場所は高田馬場にある「おとめ山」というところ。
友人と共に公園に行ってみると、誰もいない、静かな公園がそこにはあった。鳴っているのは雨の音だけ。池があったから、池に落ちる雨の音、
後は葉っぱの上に落ちる雨の音もした。そんな中歩いているのが何とも楽しかったのです。雨が好きな私としては久しぶりな感覚で面白かった。

ちょうど公園についたくらいに雨が強くなった。これがまた何とも情緒があって良いのだけれど。
クヌギとか、シイとかあったかな。樹液の匂いとかもして、面白かった。
雨が降っている時に公園を歩いてみると、幼い頃の記憶を思い出した。大人たちがやってこない公園に行き、大人たちの目が届かないような場所に行ってみる。
雨の日なんて大人たちは家でゆっくりコーヒーなんかを飲んでいるから、大人たちはやってこない。子供だけの空間になる。
あの時の何だかワクワクする気持ち。隔絶された世界にいるような気持ちが忘れられないのかもしれない、とも思った。
雨が好きなのは自分を隠してくれるから。雨が好きなのは、きっとどこかで子供の頃の記憶を探しているから。
そう思った。
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